唯一の正しい知恵は、人類から遥か遠く離れた大いなる孤独の中に住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこにたどり着くことができる 〜エスキモーのことば
(via ogawama)
だがね、黒いキャンパスの上にどんな明るい色を塗っても、その下にある黒はどうしてもかすかに浮き出てくる。だから再びその上に色を重ねてゆく。私はね、生きてゆくということは、そんな終わりのない作業のような気がするんだよ……。 〜『イニュニック』星野道夫
すべての物質は化石であり、その昔は一度きりの昔ではない。いきものとは息をつくるもの、風をつくるものだ。太古からいきもののつくった風をすべて集めている図書館が地球をとりまく大気だ。風がすっぽり体をつつむ時、それは古い物語が吹いてきたのだと思えばいい。風こそは信じがたいほどやわらかい、真の化石なのだ。 〜『ものがたり交響』谷川雁
中庭の木に小鳥が来ているのを見付けた。
小さな体の重みや羽毛のふくらみ、陽の光に溶けて滴る枝先の水滴まで感じ取れた。
彼はその暖かい塊を手の中に包み込むように感覚で包んだ。
それから、軽くつついた。小鳥は驚いて飛び去った。
更に体の力を抜いた。捉えられる全てのものが眩いくらいに鮮明になり、影は濃さを増した。
~『天使』佐藤亜紀
日本の一級の芸術の美というものは、それが何であっても、表面に現れているそのすぐ裏側に、死をはらんでいる、秘めていることが特徴ではないだろうか。逆 にいうと、それが文学でも美術でも生け花でも能や舞いや茶道でも、静けさや穏やかさのなかに死を秘めていることを感じさせないものは、一級品ではないので はないだろうか。このことはわたしたちの何を意味しているのだろうと、わたしは時にかんがえる。
~三島由紀夫
精神でも感情でも心の働きでも、それをこの世の果てにまでギリギリ追い詰めていくと、いつか必ず、もうこれ以上は進めない、行き止まりだという地点に至 る。その地点では、言葉も心も、ただ無言でふるふる震えているだけだ。われわれの歴史の古典文学には、その場所だけが重要だ、あとは要らないというもの が、いかに多いことだろう
~小林秀雄
(via Sekator)